ある哲学者によって書かれ、随分前に亡くなった大勢の手で書き写された古代の書き物について、年老いた男が若い男に語り、酒宴の席で劇作家が神話として披露した話に、かつては円形だった人間が登場する。彼らは、地球、太陽、月の子どもたちで、地球、太陽、月と同じように、完全に丸形で、非常に強い力を有していた。それぞれ二つの頭、四本の腕、四本の足があった。彼らは完全で、その完全さゆえ神々のようだった。あるとき、神々はこの丸い人間たちが自分の立場を超えた考えを持ち、やがて神の領域を荒らしはじめるのではないかと心配しはじめた。そこで神々は、一本の毛でゆで卵を切るみたいに、人間を真っ二つにすることにした。そうして人間は、ひとつの頭、二本の腕、二本の足を持つ半分の人間になった。神々は新たに生まれた半分の人間たちの頭を回転させ、もう半分が切り落とされた切断面が見えるようにした。医療の神でもある太陽の神は、半分の人間たちの皮膚を伸ばして生々しい傷を隠し、巾着袋のように皮膚をぎゅっとまとめて、今ではへそと呼ばれる結び目を作って縛った。そうすれば、半分の人間は自分のお腹を見下ろすたびに、かつての自分の姿を思い出せると太陽の神は言った。こんなふうにして、人間愛が生まれた。半分の人間は、二つになってしまったものを再びひとつにしたいという願望に悩まされながら、失った自分の片割れを永遠に探し続けた。ときには半分の人間が、自分に合いそうな別の半分の人間を見つけて、哀れなふたりがお互いに体を押し付け合いながら、鍛冶屋の神に、ふたりの体を永遠に溶接してくださいと声を張り上げることもあった。こうして懸命に昔の状態を取り戻そうとし続けた結果、人間は神々を脅かすものではなくなった。

私はこの神話を、結婚式で一度聞いたことがある。新郎新婦はふたりでひとつ、ひとりの人間である私たちを、見よ！　と言っていた。彼らは、ある哲学者によって書かれ、随分前に亡くなった大勢の手で書き写された古代の書き物について、年老いた男が若い男に語り、酒宴の席で劇作家が神話として披露した話が、冗談だと知らなかったのだ。愚かな恋人たちが語る愛の物語という冗談で、まさに恋人たちの本質を表している。この冗談を信じることは、私たちはひとつに戻りたいと願うべきで、いつもお互いを必要としていると思うこと。それは、腐敗や死、満足することのない熱い欲望の存在を忘れるという幻想だ。自分が円形で、へそがなく、二つの頭と完璧な丸みを有して神のようになっているところを想像してほしい。それでも、もっと欲しいし、もっと必要だと思うのではないだろうか––––耐えがたいほどこんなにも豊かなのに、さらにもっと。

本当のところ、愛はこんな感じだ。とても美しかった私の祖母は一八歳のとき、顔が好みだった男の子との結婚に応じた。それまで他の男の子に断り続けてきた祖母は、いずれは承諾しなければならないとわかっていたので、顔が気に入ったその男の子を選んだのだ。優しそうな顔だった。彼女は三人の子供を産んで、育て、家事をこなし、夫の自尊心が傷つくたびに癒やしてやった。たいてい、夫は彼女の顔を眺めては、一八歳だった頃と同じように見えると言った。少し前のある夜、彼は「寒い」と言って祖母を起こした。彼女がウールの毛布を彼の体に巻き付けて、自分の方へ引き寄せると、彼は死んだ。生きていた頃、祖父はたくさんの本を読んでいた。今では祖母が本を読んで過ごしているが、本を読むと関節炎の手が腫れて痙攣してしまう。最後に祖母に会ったのは数ヶ月前で、スクリーン越しだった。彼女は手に本を持っていて、それは茶色い紙で丁寧に包まれた私の本だった。読もうとしているけれど、書かれていることをすべて理解できるかどうかわからないと言っていた。そして、どれだけおまえを愛しているかわかる？　と訊いた。わかる？